1.ツシマウラボシシジミの発見
ツシマウラボシシジミは、前述のように、1990年代頃には、生息する範囲が拡大しており、普通にみられるチョウとされていました。しかし、2011年9月、ツシマウラボシシジミがシカの影響で急激に減少しており、ほとんど確認されなくなっているという情報が日本チョウ類保全協会に届きました。
しかし、正確な状況は明らかではありませんでした。他からは、シカの影響が少ない場所ではまだ残っているとの情報も得られ、どの程度、危機的な状況かはわかりませんでしたが、2012年10月に現地調査を行いました。
結局、8日間も調査を続けたものの、まったく発見できず、対馬を後にしました。
この調査で、ツシマウラボシシジミは、シカによって食草のヌスビトハギ類が食べられることにより、壊滅的なダメージを受けていることがはっきりしました。対馬におけるシカは、長崎県の報告によると、2011年における総個体数は33,416頭/㎢と推定され、これは個体数の密度に換算すると、47頭/㎢にもなります。これは全国的にも非常に高い密度です。
結局、8日間も調査を続けたものの、まったく発見できず、対馬を後にしました。
この調査で、ツシマウラボシシジミは、シカによって食草のヌスビトハギ類が食べられることにより、壊滅的なダメージを受けていることがはっきりしました。対馬におけるシカは、長崎県の報告によると、2011年における総個体数は33,416頭/㎢と推定され、これは個体数の密度に換算すると、47頭/㎢にもなります。これは全国的にも非常に高い密度です。
そして、調査を開始した当日に1個体を発見、その後、最後まで残っていた生息地を発見することができました。この時は成虫だけではなく、ヌスビトハギに産卵された卵も発見できました。
2.ツシマウラボシシジミの保全活動
チョウが発見されたことから、すぐに現地での保全活動が始まりました。対馬市や環境省と協働し、生息状況の調査、生息環境の改善、一時的な飼育による放チョウなどを行いましたが、生息状況は次第に悪化していきました。そして、このままでは絶滅してしまう可能性が高くなったことから、自然状態(野生下)での保全に見切りをつけ、飼育下繁殖(生息域外保全)によって保全を行う方向へと動きました。
そして、羽化した成虫をチョウの温室に飛ばし、心配していた交尾を成功させることができ、その後、人工的な産卵、幼虫の飼育を行い、次世代を得ることができました。
当協会の活動から始まったツシマウラボシシジミの保全活動は、その後、当協会のほか、多くの関係者(行政(対馬市、環境省、長崎県)、昆虫館(足立区生物園、長崎バイオパーク、箕面公園昆虫館)、研究者(東京大学、大阪府立大学))が参画し、生息域内、生息域外の保全活動が進められています。
野生下ではまだ絶滅する可能性が考えられることから、生息域外での保全も継続しており、足立区生物園に加え、長崎バイオパーク、箕面公園昆虫館でも飼育下繁殖がされており、現在3つの昆虫館で進められています。
生息域内での保全活動は、シカの被害を防ぐことがもっとも重要であることから、対馬の3つのエリアで防鹿柵の設置と柵内での環境改善の取り組みが進んでおり、対馬市、環境省、当協会によって設置された防鹿柵の数は30にもなっています。
また、東京大学および大阪府立大学による専門的な研究が行われ、日本鱗翅学会自然保護委員会によるシイタケ栽培地における保全の取り組みも進められています。
そして、本種の保全のための環境省の保全連絡会議が年1回程度行われ、各関係者による連携した取り組みとなっています。
3.保全活動の状況
生息域外保全は、前述のように、足立区生物園、長崎バイオパーク、箕面公園昆虫館の3館で行われており、年3回程度成虫を発生させ、チョウの温室で交配作業も行われています。また、交配終了後は、チョウの温室での一般公開もされています。
足立区生物園での生息域外保全の様子
また、対馬の生息地では、生息適地にシカの侵入を防止するための柵を設け、そこに食草や吸蜜植物を植栽したり、播種したりすることで、環境の復元が進められています。そして、柵の中では、ツシマウラボシシジミの食草や吸蜜植物が繁茂し、良好な生息環境が少しずつ戻ってきています。
そして、環境が整備されてきた場所では、飼育した個体が放され、野生でツシマウラボシシジミが復活するような取り組みが進められています。
野生下への放チョウは、2013年より行われてきましたが、環境の復元に時間がかかり、なかなか野生下での定着が見られませんでした。しかし、2019年度以降、放した個体が野生下で世代を繰り返し、数が増える状況が見られるようになってきました。
ツシマウラボシシジミでは、以上のように、野生下での復活に向けた取り組みが年々前進しています。まだ野生での定着が短期間確認されたばかりであり、今後も多くの取り組みが必要ですが、近い将来、ツシマウラボシシジミが対馬で安定してみられる状況を目指して、関係者が協働で取り組みが進められています。
日本チョウ類保全協会では、絶滅危惧のチョウの保全に重点をおき、このような活動を全国的に進めています。多くのみなさまのご参加・ご協力・ご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
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特定非営利活動法人
日本チョウ類保全協会
Japan Butterfly Conservation Society
Tel : 03-3775-7006
HP :https://www.savebutterflies.jp
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